白血病の症状と種類や診断と治療法の解説

白血病の症状と種類

白血病の基本情報
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白血病とは

白血球ががん化する血液のがんで、骨髄で異常な血液細胞が増殖する病気です。

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主な分類

急性・慢性の進行速度と、骨髄性・リンパ性の細胞起源による4つの主要タイプに分類されます。

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早期発見のポイント

貧血症状、出血傾向、発熱・感染症などの症状が現れたら早めに受診することが重要です。

白血病は血液中の細胞の一種である白血球ががん化する病気で、いわゆる「血液のがん」と呼ばれています。正常な血液細胞の生成が妨げられることで、様々な症状が現れます。白血病は単一の疾患ではなく、がん化した白血球などの血液細胞が無制限に増殖する病気の総称です。

白血病は大きく急性と慢性に分けられ、さらに骨髄性とリンパ性に分類されます。これにより、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)の4つの主要タイプに分けられます。それぞれのタイプによって症状や治療法が異なるため、正確な診断が重要となります。

白血病の急性と慢性の症状の違い

急性白血病と慢性白血病では、症状の現れ方に大きな違いがあります。

急性白血病の症状:

急性白血病は症状の進行が非常に速いのが特徴です。未熟な白血病細胞(芽球)が急速に増殖するため、発症から数週間で重篤な状態になることもあります。主な症状には以下のようなものがあります。

  • 急激な体調不良(全身倦怠感、発熱)
  • 顕著な貧血症状(息切れ、動悸、顔色の悪さ)
  • 出血傾向(鼻血、歯肉出血、皮下出血)
  • 感染症の頻発(発熱、のどの腫れ)
  • 骨や関節の痛み

急性白血病の場合、これらの症状が短期間で現れることが多く、風邪のような症状から始まることもありますが、通常の風邪と異なり症状が長引きます。

慢性白血病の症状:

慢性白血病は症状がゆっくりと進行するのが特徴です。初期段階では自覚症状がほとんどなく、健康診断などで偶然発見されることも少なくありません。

  • 初期には無症状のことが多い
  • 徐々に現れる倦怠感や疲労感
  • 脾臓の腫大による腹部膨満感
  • 寝汗や微熱
  • 体重減少
  • 皮膚のかゆみ

慢性白血病は数年かけてゆっくりと進行しますが、治療せずに放置すると「急性転化」と呼ばれる状態になり、急性白血病のような症状を呈することもあります。

白血病の骨髄性とリンパ性の特徴的な症状

白血病は発生する細胞の種類によって、骨髄性白血病とリンパ性白血病に分けられます。それぞれに特徴的な症状があります。

骨髄性白血病の特徴的な症状:

骨髄性白血病は骨髄系の幹細胞から発生し、主に以下のような症状が見られます。

  • 貧血症状(顔色不良、疲労感、息切れ)
  • 出血傾向(皮下出血、鼻血)
  • 感染症(発熱、肺炎など)
  • 骨痛(特に胸骨や肋骨)
  • 脾臓や肝臓の腫大

特に急性骨髄性白血病(AML)では、白血病細胞が皮膚に浸潤して緑色腫(クロロマ)と呼ばれる腫瘤を形成することがあります。

リンパ性白血病の特徴的な症状:

リンパ性白血病はリンパ球系の幹細胞から発生し、主に以下のような症状が見られます。

  • リンパ節の腫れ(首、脇の下、鼠径部など)
  • 発熱や寝汗
  • 体重減少
  • 脾臓の腫大
  • 中枢神経症状(頭痛、嘔吐、意識障害など)

特に急性リンパ性白血病(ALL)は小児に多く見られ、中枢神経系への浸潤が起こりやすいという特徴があります。慢性リンパ性白血病(CLL)は高齢者に多く、進行がゆっくりで初期には無症状のことが多いです。

白血病の初期症状と見逃しやすいサイン

白血病の初期症状は非特異的で、他の疾患と区別が難しいことが多いです。以下のような症状が続く場合は、白血病の可能性を考慮して医療機関を受診することが重要です。

見逃しやすい初期症状:

  1. 持続する疲労感や倦怠感

    日常生活で感じる疲れとは異なり、休息をとっても改善しない強い倦怠感が続きます。これは貧血による症状で、白血病の初期段階でよく見られます。

  2. 微熱や寝汗

    原因不明の微熱(37℃台)が続いたり、寝汗をかきやすくなったりすることがあります。特に夜間に汗をびっしょりかくような状態が続く場合は注意が必要です。

  3. 軽度の出血傾向

    歯磨き時の歯茎からの出血が増える、ちょっとしたことで青あざができやすくなるなどの症状が現れることがあります。

  4. 感染症にかかりやすくなる

    風邪や感染症にかかりやすくなり、治りにくくなることがあります。これは白血病により正常な白血球の機能が低下するためです。

  5. 動悸や息切れ

    少し動いただけで動悸や息切れを感じるようになることがあります。これは貧血による症状です。

これらの症状は風邪や疲労など他の原因でも起こり得るため見逃されやすいですが、症状が2週間以上続く場合は医療機関での検査を検討すべきです。

白血病の進行に伴う症状の変化と合併症

白血病が進行すると、初期症状がより顕著になるとともに、新たな症状や合併症が現れることがあります。

進行期の症状:

  • 重度の貧血:顔面蒼白、極度の疲労感、めまい、失神など
  • 出血傾向の悪化:自然出血(鼻血、歯肉出血)、内出血、消化管出血など
  • 感染症の重症化:肺炎、敗血症などの重篤な感染症
  • 臓器浸潤による症状:肝臓や脾臓の腫大による腹部膨満感や痛み
  • 骨痛の悪化:骨への白血病細胞の浸潤による激しい痛み

主な合併症:

  1. 播種性血管内凝固(DIC)

    血液凝固系の異常により、全身に小さな血栓ができると同時に出血傾向も強まる危険な状態です。

  2. 腫瘍崩壊症候群

    治療開始後に大量の白血病細胞が急速に死滅することで、高カリウム血症、高リン血症、高尿酸血症、低カルシウム血症などの代謝異常が起こります。

  3. 中枢神経系浸潤

    白血病細胞が脳や脊髄に浸潤することで、頭痛、嘔吐、意識障害、けいれんなどの神経症状が現れることがあります。

  4. 白血球増加症候群

    白血球数が極端に増加することで、血液の粘度が上昇し、微小循環障害や臓器不全を引き起こすことがあります。

  5. 免疫不全による日和見感染

    通常は病原性の低い微生物による感染症(カンジダ症、アスペルギルス症、ニューモシスチス肺炎など)が発症することがあります。

白血病の進行度や合併症の有無によって治療方針や予後が大きく変わるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。

白血病と心悸亢進:見落とされがちな関連性

白血病の症状として、心悸亢進(心悸亢進:しんきこうしん、動悸が激しくなる状態)が現れることがありますが、この症状と白血病の関連性はあまり知られていません。特に注目すべきは、心悸亢進が白血病の初発症状として現れる場合があるという点です。

心悸亢進と白血病の関連メカニズム:

  1. 貧血による代償性頻脈

    白血病により正常な赤血球の産生が抑制されると貧血が生じます。体は酸素供給を維持するために心拍数を上げようとするため、動悸を感じるようになります。

  2. 白血病細胞の心臓周囲への浸潤

    稀なケースですが、白血病細胞が心臓周囲の組織に浸潤することで不整脈や動悸を引き起こすことがあります。

  3. 電解質異常

    白血病の進行や治療に伴い電解質バランスが崩れると、心臓のリズム異常を引き起こし、動悸として感じられることがあります。

  4. 中枢神経系への影響

    白血病細胞が中枢神経系に浸潤すると、自律神経系の調節異常を引き起こし、心拍数の変動や動悸につながることがあります。

最近の研究では、特に小児の急性リンパ性白血病において、心悸亢進が初発症状として現れるケースが報告されています。2024年の症例報告では、造血幹細胞移植後に巨細胞病毒脳炎を合併した小児急性リンパ細胞白血病患者において、心悸亢進が最初の症状として現れたことが報告されています。

この症例では、患者は心悸亢進を訴えたものの、典型的な脳炎の神経症状がなかったため診断が遅れました。このことから、原因不明の心悸亢進がある場合、特に他の症状を伴う場合は、白血病やその合併症の可能性も考慮すべきであることが示唆されています。

医療従事者は、持続する原因不明の動悸を訴える患者、特に他の非特異的症状(疲労感、微熱、出血傾向など)を伴う場合には、白血病の可能性も念頭に置いて診療にあたることが重要です。

参考:巨細胞病毒脑炎を合併した白血病患者の症例報告(中国語)

白血病の症状と他疾患との鑑別ポイント

白血病の症状は他の疾患と類似していることが多く、鑑別診断が重要です。以下に、白血病と間違えやすい疾患とその鑑別ポイントを解説します。

1. 感染症(ウイルス感染など)との鑑別

症状 白血病 感染症
発熱 持続的、抗生剤に反応しにくい 一過性、抗生剤に反応することが多い
倦怠感 進行性、休息で改善しない 一時的、回復期に改善する
血液検査 血球異常(芽球の出現など) 炎症反応の上昇、特異的な抗体価の上昇
経過 症状が長期間持続・悪化 通常1〜2週間で軽快

2. 再生不良性貧血との鑑別

症状 白血病 再生不良性貧血
貧血症状 あり あり
白血球数 増加または減少、芽球の出現 減少、芽球なし
骨髄検査 過形成、芽球の増加 低形成、造血細胞の減少
肝脾腫 しばしば認める 通常認めない

3. 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)との鑑別

症状 白血病 ITP
出血傾向 あり あり
貧血 しばしば認める 通常認めない(出血が多い場合を除く)
白血球異常 あり なし
骨髄検査 芽球の増加 巨核球の増加または正常

4. リンパ腫との鑑別

症状 白血病 リンパ腫
リンパ節腫脹 全身性のことが多い 局所性から始まることが多い
血液検査 末梢血に芽球出現 通常末梢血に異常細胞なし
骨髄浸潤 早期から認める 進行期に認めることがある
治療反応性 化学療法が主体 放射線療法も有効なことがある

5. 慢性疲労症候群との鑑別

症状 白血病 慢性疲労症候群
倦怠感 進行性 変動あり
血液検査 血球異常あり 通常正常
身体所見 貧血、出血傾向、リンパ節腫脹など 特異的所見に乏しい
発熱 しばしば認める 微熱のことがある

白血病を疑うべき重要なポイントとして、以下の